不易流行
日本人の価値観やライフスタイルの変化に伴い、有形無形の日本文化が危機に瀕しています。
雅楽などの古典芸能、桐箪笥などの伝統工芸品。大切な日本伝統文化でも、現在(いま)の生活に必要なかったり、 魅力的でなければ、廃れてしまうのが世の摂理なのかもしれません。
近江の麻も例外ではありません。
国産麻の需要が急激に落ち込む中、熟練職人の高齢化や継承者問題で、長年の歴史を誇る専門加工業者の廃業が 相次いでいます。
「革新の連続が伝統をつくる」
代々続く伝統工芸の担い手たちの、最も重要な責務。それは、「残すべきもの。変えるべきもの。」を見極め、 自己変革に挑みながら、先人から託されたバトンを次世代へ渡すこと。
今治タオルや燕三条の金属加工品は果敢に変革することで、新しい時代に伝統を残しました。
100年経っても変わらぬ価値
では、私たち近江の麻の担い手が、未来のためにやるべきことは何なのか?
私たちが携わる寝具用品。技術面では、日進月歩の化学繊維には敵いません。コスト面では、 大量生産の中国製には及びません。
でもそれは、今治タオルも同じです。
アコースティックな弦楽器が奏でる音色の美しさ。
どんなに電子楽器が発達しても、優しく自然なチェロの音色の価値は100年経っても変わりません。
私たちがこだわり続けるべき価値は、ここなのかもしれません。
最先端の化学繊維が持つ機能的価値や、最安値で作れる原産地のコスト価値は、時代と共に直ぐに 陳腐化してしまいます。
一方、地域文化と先人の技が蓄積された逸品には、機能や最安値競争を超えた、 情緒的な価値が宿っています。
そして、機能面だけでなく、情緒的価値も重視する「ホンモノ志向」の層がいる限り、 日本の逸品は脈々と続いていくのでしょう。
五感を込めた麻づくり
時代を超越した情緒的価値を継承しながら、その時代や環境に即した機能的価値を提供する近江の麻寝具。
暑い夏の夜、近江の麻パッドに寝転んだ際、その卓越した機能的爽涼感とともに、鈴鹿山脈の渓流や、 五個荘町の冷たい湧水も感じる心地よさ。
スッーと眠りに入る際、年代物のレピア織機の奏でる音や、 見たこともない縮加工の作業光景が思い浮かび、心安らぐデジャブな感覚。
情景やヒトの手の温もり、空気感、清流の匂いや織機の音全て、五感を込めた麻作り。
それが、私たち近江の麻の担い手が進むべき道だと考えます。
先人が遺してくれた技術や文化、誇りと想いをしっかり生地に乗せ、その素晴らしさを現在(いま)に伝え続けます。
そして、革新を続けることで伝統を遺し、六百年続く近江の麻のバトンリレーを、未来(あす)に必ず繋げます。
「洗うほどに逞しく、つかうほどに愛おしい。」
貴方の夏の暮らしに寄り添うパートナーとして、一生涯お付き合い頂ければ幸いです。